肝臓・肝機能障害の治療ガイド

-B型肝炎ウイルスの再活性化-

B型肝炎ウイルスの再活性化

免疫抑制によるB型肝炎ウイルスの再活性化

B型肝炎は、B型肝炎のウイルス感染によって発症する疾患ですが、B型肝炎ウイルスは感染しても自然に治ることも多いです。しかし、治ってもウイルスの遺伝子は肝臓に残っています。近年、免疫を抑える新薬や新治療法が登場し、病気の治療でウイルスが再活性化する例が報告され始めました。

B型肝炎ウイルスの感染歴のある人が、血液がんやリウマチなどの免疫を抑える治療をきっかけに、ウイルスが再活性化する危険があることが厚生労働省研究班の調査でわかりましたが、再活性化を早期に発見すれば肝炎発症は防ぐことができます。

2000年代に、悪性リンパ腫で新薬を使った人に再活性化が報告されるようになり、当初はこの薬の副作用かと考えられましたが、調査などから、他の治療にも広がる可能性がいで出て来ました。

リウマチの治療は、特定の免疫物質を抑える「生物学的製剤」が2003年から相次いで登場し、既存の免疫抑制剤をより多く使う治療も普及しました。

治療効果は格段に上がりましたが、同時に強く免疫が抑制されるようになり、B型肝炎ウイルスの再活性化が起きるようになったと考えられています。

これとは別に、2009年にはリウマチ患者が死亡しました。また間質性肺炎の治療でB型肝炎を発症したとの報告もあります。

悪性リンパ腫の死亡例は全員、新薬の「リツキサン」を使っていたが、それ以外は特定の薬剤との明確な関連はわかっていません。持田智埼玉医大教授が研究代表者の厚生労働省研究班は、どんな治療でB型肝炎ウイルスの再活性化が起きるか調査中です。


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早期発見が治療のカギ

早期に抗ウイルス薬を使えば肝炎が予防できますが、治療しないと一部が劇症化して死亡することがあります。

劇症肝炎の全国登録調査では、2004~09年に少なくとも17人が劇症肝炎で死亡しています。内訳は、悪性リンパ腫13人、白血病2人、多発性骨髄腫1人、乳がん1人です。

B型肝炎ウイルスの再活性化の特長

B型肝炎ウイルスの感染ルートとは出産時の母子感染と、性感染が一般的です。母子感染はワクチンなどの予防対策が進み、現在はありません。原因不明の場合は、過去の集団予防接種での注射の器使い回しなどの医療行為によって感染した可能性があります。

B型肝炎ウイルス感染した場合、母子感染では、多くが持続感染者(キャリアー)となりますが、その他の感染では自然に治ることが多いいです。自覚症状がないまま治り、自分が感染したことを知らない人もいます。感染歴のある人は中高年に多く、50歳以上だと約2割、全国1000万人以上と推定されます。そのうち、血液中にウイルスのたんぱく質(抗原)が検出される持続感染者は100万~130万人とみられています。

感染歴の検査は、血液検査で抗体(ウイルスに対する免疫物質)を調べればわかります。

再活性化するメカニズムは、B型肝炎ウイルスは、治った後も、ウイルスの遺伝子が肝臓に残っているためです。通常はそのままで何も間題はありませんが、免疫を抑える薬を使うと体の低抗力が低下するため、ウイルスが再び増えることがあります。感染歴がわかっていても、免疫を抑える治療を受けなければまず心配はありません。

再活性化した場合、感染歴のある人は、免疫を抑える薬や抗がん剤で治療中から治療後1年間まで、ウイルスの遺伝子検査を定期的に行います。遺伝子が検出された場合、抗ウイルス薬を服用した例では、肝炎の発症は抑えられています。

再活性化を恐れて、治療を差し控えるべきではありません。B型肝炎ウイルスの再活性化を起こす薬は、元の病気の治療効果が高いものが多いいです。検査を受け、対策をとれば再活性化は防げます。

B型以外のA型、C型肝炎ウイルスは治るとウイルス自体が体内になくなるので、再活性化は起きません。


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